岡山県 新型コロナウイルス感染症対策室
2022-03-30
業種
行政
目的・効果
支店・店舗との連絡 コンプライアンス・セキュリティ スマートフォン活用 予定の見える化 FAX削減・ペーパーレス
主な活用機能
カレンダー
お話を伺った方
新型コロナウイルス感染症対策室 医療調整グループ 参事 和田 章さん
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新型コロナウイルス感染症患者を療養施設に移送する車両の運用をLINE WORKSで管理。保健所による車両予約が、スピーディに行えるようになりました。

岡山県の新型コロナウイルス感染症対策室(以下、県本部)は、各保健所の利用要請に応じて、患者を自宅から療養施設に移送する専用車両を確保する手配業務を省力化するためLINE WORKSを導入。カレンダーに「共用設備」として車両を登録することで、保健所の職員が県本部の職員に空き状況を電話で確認することなく、LINE WORKS上で利用したい日時を予約できるようにしました。時間を問わず迅速に手配できるようになったことで、保健所と県本部双方の職員の業務負担が大きく軽減しています。

 

*本事例はLINE WORKSのカレンダー機能にある「共有設備」を主に活用しています。共有設備についてはこちらを参考ください。

 

本事例のポイント
  • 車両と看護師を「共用設備」としてカレンダーに登録して運用を管理
  • 空き状況を電話で確認する必要がなくなり予約業務がスピードアップ
  • 属人的な管理によるダブルブッキングを防止
  • 職員の勤務時間外でも24時間いつでも予約を入れることが可能に

岡山県では、新型コロナウイルス感染症に感染した患者さんをどのような手段で療養施設へ移送していますか。

和田さん :

岡山県は感染者を自宅から療養施設に移送するため、民間企業に委託して運転席と後部客席をパーティションで仕切った専用車両7台を手配しています。車両の運用を管理する県本部の職員は、県内11の保健所から新規陽性者の発生に伴う移送要請の電話を受けると、県本部のホワイトボードに記載された車両予約表と照らしながら利用日時を調整します。

車両の仮予約後、調整した日時で問題ないか保健所に確認をとり、確定となったら移送先等の情報が記載された「移送依頼書」を保健所からFAXで受信し、県本部から委託会社にFAXで転送することで予約手配が完了するという流れになっていました。

 

患者を移送するための専用車両

 

しかし、このフローは、県本部職員への負荷が大きく、新規感染者が多数発生した2021年の第5波に際しては、保健所からの予約電話が相次ぎ対応に苦慮しました。車両の予約状況をホワイトボードで管理していたため、見間違いや書き間違いなどによるダブルブッキングも起こりがちでした。車両は岡山市を基地としており、岡山市から遠い地域の患者さんを移送した車両が戻る途中で、次の移送対応が可能か予測しなければならないのも煩雑な状況でした。

 

また、患者さんの容体急変などに対応するため、移送には保健所の職員が同行することになっています。しかし第5波の感染拡大時にはその人員を割くことが困難となり、保健所職員に代わって同行する看護師3名を県が手配。その看護師の運用もホワイトボードで管理していたため、車両と同様にダブルブッキングをするおそれがありました。

 

当時、移送手配の予約管理をしていたホワイトボード

 

こうした煩雑な状況を改善するために、属人化した業務の仕組みを根本的に見直し、電話とホワイトボードに替わって予約作業を合理化するツールの導入を検討するようになりました。

課題解決の手段としてLINE WORKSを選ばれたのはなぜですか。

和田さん :

保健所は基本的に都道府県が設置するものですが、政令指定都市の岡山市と、人口40万超の中核市である倉敷市は、県ではなく市が保健所を設置しています。そのため、県が使っているグループウェア上でネット予約できるシステムを構築したとしても、岡山市と倉敷市の保健所はそれを利用することができません。

 

そうした状況の中で、インターネット上で使えるツールとしてLINE WORKSを利用することを思いつきました。私が2021年度まで所属していた防災関連部門では、非常時にLINE WORKSのアンケート機能で職員の安否確認を行うトライアルをしたことがあります。LINE WORKSのカレンダーにある設備予約機能を活用すれば車両の予約管理もスムーズにできると考え、導入を提案。11の保健所に1アカウントずつ、県本部に3アカウントを発行して運用することになりました。

運用に先立って準備されたことはありますか。

和田さん :

第5波が落ち着いた2021年11月に保健所職員が県の会議に参集した際、公用のスマホやタブレット端末を持参してもらい、LINE WORKSの操作法をレクチャーする30分の研修を実施しました。予約業務に携わる他の保健所職員も閲覧できるよう、操作マニュアルも配付して運用をスタートさせました。それ以降は、県本部に予約の電話がかかってきてもLINE WORKSで手配するよう促し、新しい予約の仕組みに慣れてもらうようにしました。その甲斐あって、2022年1月に感染の第6波が到来したときには、関係者全員が問題なく活用できるようになっていました。

 

職員に配布した使用マニュアル(一部)

カレンダーの設備予約機能を使った予約の具体的な手順と、その効果を教えてください。

和田さん :

まず、予め7台の車両と3名の看護師を管理画面から「共有設備」として登録しました。患者さんを移送したい各保健所の職員は空き状況を保健所のタブレットやPCからLINE WORKSのカレンダーで確認し、職員自身で予定を作成して利用時間や使用車両、看護師を登録し「移送依頼書」を県本部にFAXで送信します。その「移送依頼書」と予定が合っているか確認し、委託会社に転送します。委託会社までLINE WORKSで情報を共有することを考えていましたが、委託会社から紙で出力してほしいという要望があったため、FAXで送るフローを残しています。県本部から委託会社にFAX転送することで手配が完了するという流れは従来と同じですが、保健所と県本部の職員が電話でやり取りする必要は一切なくなりました。

煩雑だった予約業務がスマホやタブレット端末上でスピーディにできるようになったのはもちろん、予約管理がホワイトボードからカレンダーに移行して電子化され、ダブルブッキングを防げるようになったのも、LINE WORKSの大きな導入効果です。

 

設備予約画面
スケジュール管理がホワイトボードからカレンダーに移行
利用保健所、車両の空き状況、看護師の空き状況が一目で把握できるようになった。

 

予定は、全保健所と県の職員のアカウントが入っているグループカレンダーに登録してもっています。そうすることで、新規で予約が登録されたときや修正、キャンセルされる度にタイムリーにグループメンバーに通知が届き、さらにトークグループでその内容がぱっとわかるので、状況の把握がしやすくなりました。

 

予約の新規登録や修正・削除がなされると全保健所と県の職員の
アカウントが入っているグループトークルームに通知が発信され
関係者全員がタイムリーに把握できる。

保健所の職員の皆さんは、LINE WORKSをどう受け止めておられますか。

和田さん :

導入した当初は新しいICTツールに対して消極的な反応を示す保健所職員もいましたが、予約画面はシンプルで操作も簡単なことから、すぐに全員に定着しました。感染者が多数出ている時期に県本部の電話が通話中でつながらないといったこともなくなり、誰もが業務改善効果を実感しているはずです。

予約管理をしていたホワイトボードは県本部の職員しか目にすることができなかったため、希望日時の予約を取れなかった保健所が、「人口の多い保健所が優先的に車両を押さえているのではないか」と問い合わせを受けたこともありました。しかしLINE WORKSのカレンダーにはどこの保健所が使用するのか等、予約状況の全体が可視化されるので、誤解を抱かれることもなくなりました。

県本部の職員が電話で予約を受け付けていたときは勤務時間内にしか対応できませんでしたが、今は時間を問わずに予約状況の確認や仮予約ができます。そうした面でも便利になったことを、多くの保健所が感じていると思います。

LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。

和田さん :

前述のとおり「移送依頼書」は、現状では保健所や委託会社との間でFAXによるやり取りを残しています。何らかの方法でセキュリティ上の課題をクリアして、予約から手配完了までがLINE WORKS上で完結するようになれば、業務のさらなる効率化とスピードアップが実現すると思います。また、LINE WORKSにはさまざまな機能が備わっているので、今後はカレンダー以外の機能も活用して保健所とのスムーズな情報共有に役立てていきたいです。

 

【お話を伺った方】

和田 章さん

新型コロナウイルス感染症の患者さんを自宅から療養施設へ移送する車両をLINE WORKSで予約する仕組みを構築し、その運用管理に携わる。

 

 

※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2022年3月当時のものです。