愛媛県 市町振興課
2023-05-11
業種
行政
目的・効果
従業員間の連絡 BCP・安否確認 電話・メールの削減
主な活用機能
トーク
グループ
掲示板
お話を伺った方
総務部 総務管理局 市町振興課 課長 森 佑布さん(左)  
総務部 総務管理局 市町振興課 行政係 主任 宮本 祐介さん(右)
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各市町と県を結ぶ「災害対応ホットライン」をLINE WORKSで構築しBCP対策を強化。非常時の連携をスムーズにすることで円滑な相互支援を目指します。

愛媛県は平成30年の西日本豪雨時に、支援を必要とする市町に割り当てられた市町から職員を派遣するカウンターパート方式を導入し、支援活動が行われましたが、被災市町と支援市町の連絡を県の災害対策本部が電話で取り次いだため、スピーディな意思疎通や情報共有が図りにくいという課題が発覚しました。その課題を解消するため、非常時に市町・県がトークで速やかに情報をやり取りできるホットラインをLINE WORKSで構築しました。

 

本事例のポイント

-BCP対策を強化し、被災市町から支援市町への応援要請がスピードアップ

-県災害対策本部による市町間の電話連絡の取り次ぎ業務が不要に

-やり取りの記録が残ることで聞き間違いなどを防止

愛媛県がBCPの一環として採用しているカウンターパート方式とはどのようなものですか。

森さん :

愛媛県ではさまざまな行政課題に県と20市町が足並みをそろえて対応するため、以前より「県・市町連携推進本部」を「チーム愛媛」で組織・運営しています。重点連携項目の一つである「防災・減災対策」において、災害時の市町相互応援体制を強化するために採り入れたのがカウンターパート方式です。これは自然災害などで甚大な被害を受けた市町を支援する市町をあらかじめ割り当てておくもので、要請に応じて職員が派遣されるというものです。

 

 

宮本さん :

支援の主な内容は、避難所運営や家屋等の被害認定調査、罹災(りさい)証明書の発行などです。平成30年7月に西日本豪雨災害が発生したときは、特に被害の大きかった宇和島市、大洲市、西予市に対して、カウンターパートに指定された他の市町から応援が行われました。

 

その相互支援体制を機能させるうえで、何か課題があったのでしょうか。

森さん :

災害発生時の支援体制をさらに強化するため、平成31年2月にカウンターパートをA・B・Cの3グループに整理し、各グループ内で一次支援をする市と二次支援をする市町を設定。その結果、被災した市町への支援がより速やかに行われる体制が全県下で確立されました。しかし、いざ災害が起きたときにしっかり対応するには、平時からの連携強化が必要です。そこでカウンターパートの市町どうしがお互いの防災訓練に参加するといった取り組みが行われるようになりました。

 

愛媛県におけるカウンターパート関係の構築

 

宮本さん :

西日本豪雨の際はカウンターパートの市町どうしが直接やり取りするのではなく、支援を求める市町がまず県に要請し、県がカウンターパートの市町にその要請を伝えるというかたちで仲介をしていたため、連絡に多くの時間と手間がかかることがわかりました。また、電話で行われていた災害発生時における市町間の連絡体制を見直す必要性も課題にあがりました。災害時には電話回線が寸断する可能性もあり、電話以外でも非常時に県と各市町が迅速かつ確実に連絡し合えるコミュニケーション手段を持つことが必要だと気がついたのです。

課題解決に向けてLINE WORKSを選定された理由と、運用開始までの経緯をお聞かせください。

森さん :

電話に替わる適切な連絡手段をリサーチしていたところ、デジタル技術の活用による効率的な行政事務の確立を通じて地域サービスの向上を図るという目的で、県がLINE株式会社およびワークスモバイルジャパン株式会社と包括連携協定を締結することを知りました。そこで私ども市町振興課は、災害時の市町・県の連絡ツールとしてLINE WORKSを利用することを提案。それを受けて令和3年2月、グループトークルームを基盤とする新たな連絡体制「チーム愛媛 市町職員災害対応ホットライン」が設けられました。

 

宮本さん :

アカウントの管理については、担当者が異動したときにパスワードをリセットすることで後任がアカウントをそのまま引き継げるよう、個人ではなく役職に対して発行。LINE WORKSを使用するデバイスについては、県職員は各自が使い慣れた私用スマホをBYODで活用しています。

LINE WORKSを使ったホットラインの運用体制と、災害発生時に想定される具体的な使い方をご紹介ください。

森さん :

A・B・Cからなる既存のカウンターパートグループをそのままLINE WORKSのグループとして、各グループの被災市町、一次支援市、二次支援市町がトークで素早く情報を共有できるようにしました。グループの主な構成メンバーは、首長の判断を踏まえて迅速な対応ができる各市町の副市町長と防災・人事担当者です。県災害対策本部の防災局や市町振興課の担当者などもそれぞれのグループに所属することで、非常時のやり取りの内容を複数人でリアルタイムに把握できるようにしています。

 

被災時に支援し合う市町が属するグループトークルームを開設。災害発生時に各グループの担当者がスピーディに情報を共有するホットラインとして機能する(画面は2021年2月当時のものです)

 

ほかに全メンバーが所属するグループもあり、こちらは県外で大きな自然災害が発生した際に情報を共有するために使っています。

 

宮本さん :

災害発生時には、被災した市町が被害の状況とともに応援職員の派遣要請をトークで発信すると、同じグループ内の一次支援市が直ちに職員の派遣を手配。被害が大きく一次支援市だけでは対応しきれない場合に備えて、二次支援市町も早い段階から準備を整えます。グループトークでの市町間のやり取りは、県災害対策本部も把握できる状態なので、必要に応じて臨機応変に協力することが可能です。

 

幸いにしてこのホットラインの構築後に大きな災害を経験しておらず、実際に支援要請が出されたことはないのですが、大型の台風が接近した際に県の防災局が全グループに注意を喚起するメッセージを発信したことがあり、防災・減災対策としてしっかり機能していることを確認しています。

 

災害時にホットラインとして使うのが主目的なので基本的にはトークのみの活用ですが、アプリのアップデートを促したり、人事異動などに際する担当者の変更を案内したりする情報については、掲示板で全体に周知するようにしています。

 

県からメンバー全体への通知・通達は掲示板で周知される(画面は2021年2月当時のものです)

ホットラインを整備したことは防災体制の強化にとってどんな意義がありましたか。

森さん :

災害時の市町・県のやり取りがホットライン上に集約され、そのすべての情報を全関係者に直ちに共有できるので、西日本豪雨のときのように被災市町と支援市町の連絡を県が仲立ちする必要がありません。県が連絡業務に時間を費やすことがなくなる分、災害対策の質を高められるのではないかと考えています。既読機能があるのもありがたく、例えば未読の副市町長に情報を伝えてもらうよう、その市町の担当者に電話で依頼したりすることも容易です。24時間いつでも確実に情報を伝えられ、電話と違って発信した内容が記録に残ることも、より的確な災害対応の実行につながると確信しています。

LINE WORKSの活用を今後どのように発展させたいとお考えですか。

宮本さん :

何よりも重要なのは非常時にこの仕組みをしっかり機能させることです。今後は防災訓練の一環としてLINE WORKSのグループで支援要請のトレーニングなどを通じて、体制を万全なものにしておきたいですね。

 

森さん :

複数のメンバーが同時につながれる無料ビデオ通話機能があるので、被災した市町が一次支援市や二次支援市町の担当者に、被害の状況を映像で示しながら支援を要請するといった活用の仕方も検討したいと思っています。

 

 

【お話を伺った方】

森 佑布さん

行政・財政・税政・連携推進・選挙の5つの係で構成される市町振興課を課長として管理する。

 

宮本祐介さん

被災地への市町職員派遣の連絡調整などを担当。LINE WORKSの運用管理も担う。

 

※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2023年2月当時のものです。