大阪市
2019-04-23
業種
行政
目的・効果
BCP・安否確認 スマートフォン活用 導入のしやすさ
主な活用機能
トーク
お話を伺った方
大阪市 危機管理室 危機管理課長
間嶋 淳さん(左) ICT戦略室
活用推進担当課長 中道 忠和さん(右)
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自然災害など緊急時のコミュニケーションツールとしてLINE WORKSを導入。市長と各関係機関の情報伝達・共有を迅速にし、強固な防災体制を構築しました。

3万人以上の職員を擁する大阪市は、有事の際市長からの指示を災害対策関係者へダイレクトに伝えるため、LINE WORKSを導入。関係機関の行動をスピードアップさせることで、市民がより安全に暮らせる環境を整備しようとしています。危機管理室の間嶋さん、ICT戦略室の中道さんに、LINE WORKSを活用した防災対策のあり方についてお話しいただきました。

皆さんの業務内容をご紹介ください。

危機管理室 危機管理課長 間嶋 淳さん
間嶋さん :

危機管理室では、主たる業務の一つに自然災害や大規模事故などの緊急事態への総括があります。私は危機管理課長として、室内の庶務など総括業務や自然災害発生時の情報管理業務などを担当しています。

 

中道さん :

ICT戦略室では市政のさまざまなICT基盤の運用・保守を行っており、活用推進担当課長である私は、大阪市のあらゆる部局における最先端ICTの活用推進を統括しています。

LINE WORKS導入以前、市の危機管理体制にはどのような課題がありましたか。

ICT戦略室 活用推進担当課長 中道 忠和さん
中道さん :

職員数3万人以上と県の規模にも匹敵する大阪市には約50の部局があり、庁舎も分散しています。地震やそれに伴う津波等の災害が発生した場合、市長は市民への避難呼び掛けなどを災害対策本部員や24区の区長を通じて発令しますが、その伝達は迅速かつ確実になされなければなりません。そのため、災害対策にかかわるキーパーソンがいつどこにいてもスムーズに連絡を取り合えるようにすることが、以前からの大きな課題となっていました。

2019年1月に実施された「大阪市震災総合訓練」の様子
間嶋さん :

大阪市では、特に大規模な自然災害や有事の際に市長をトップとする市災害対策本部を設置し、各局の局長が災害対策本部員、各区の区長が区災害対策本部長を務めることになっています。しかし2018年6月の大阪北部を震源とする地震に際しては、指示を出す市長からの電話が本部員や区長につながらないケースがありました。そこで、2015年の就任以来、市政のICT化を積極的に進めてきた吉村洋文市長(当時)は、災害発生時にキーパーソン間の意思疎通を確実に図られる仕組みを構築すべく、危機管理室とICT戦略室、政策企画室が新たなコミュニケーションツールの運用を検討するようになりました。

LINE WORKSを選定された理由を教えてください。

中道さん :

災害時の対応がスムーズにできるよう、大阪市では2018年度よりBYODに踏み切り、職員が個人の携帯端末からイントラネットにアクセスできるようにしています。それを踏まえて複数のツールを検討した結果、大人数でのグループチャットが可能なLINE WORKSに注目しました。そこでやり取りされる情報は公文書の一種ともいえるので、セキュリティの高さも評価して導入を決めました。管理者がやり取りのログをウォッチできるのもメリットです。

間嶋さん :

多くの職員が日常的なコミュニケーションツールとしてLINEを利用していることも選定の決め手となりました。普段から使い慣れたツールであれば、災害発生時にも操作に戸惑うことなく有効に機能することが期待されるからです。また、LINEと同様の使い勝手なので、導入教育の手間とコストがほとんどかからないのも大きな魅力でした。また、誰が既読したのかがわかることから、意思疎通が迅速になされていくのかが瞬時にわかるという要素も大きいです。

運用に際し、管理者としてどのような準備をされましたか。

間嶋さん :

LINE WORKSの導入に際して、2018年12月にLINE株式会社、ワークスモバイルジャパン株式会社、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)オープンイノベーション推進本部ソーシャルイノベーションユニット耐災害ICT研究センターと「都市防災力の向上に関する連携協定」を締結し、大阪市の防災力を高めるために、災害対応に関して相互に協力することを取り決めました。

 

中道さん :

導入決定後、災害対応に関わる約200名分のアカウントを発行。Android版とiOS版の操作マニュアルを作成して配布し、LINE WORKSアプリをダウンロードしてログインするよう通知しました。

LINE WORKSの活用により、市の危機管理体制はどう強化されたとお感じですか。

間嶋さん :

2019年1月に南海トラフ巨大地震を想定した「大阪市震災総合訓練」を実施し、災害対策本部のキーパーソン間でLINE WORKSによる情報共有を行いました。以前は庁内での防災情報システムや緊急通報システムなどを使って危機管理室と各関係機関が連絡を取り合っていましたが、それらは組織同士のコミュニケーション手段であるため、把握した被災状況や市長による指示を関係する全職員に周知させるには一定の時間を要していました。しかしLINE WORKSを利用すれば、市長からの指示が本庁舎と離れた場所にある部局や、各区のキーパーソン全員に即時かつダイレクトに伝わることが実証されました。

中道さん :

「大阪市震災総合訓練」では、市長が市民を3階以上の建物に避難させるようLINE WORKSで指示したところ、「区民の避難を公用車で呼び掛けます」といった区長からのレスポンスがわずか数分後には得られるなど、各担当者の迅速な行動が確認されました。また、そうしたやり取りはグループメンバー全員で共有されるので、この訓練では災害対策本部全体にかつてない一体感が生まれていることを感じました。市長自身もツイッターで、「LINE WORKSのツールは非常に有効だ。手に取るように情報共有できる」とつぶやいています。

市長はLINE WORKSでメンバー間の無料通話ができることも高く評価しています。大阪市のように組織が大きいと、各担当者の携帯電話番号を把握するだけでも労力がかかるので、番号を登録することなく通話ができるのは、有事の際には特に有効だと思います。

さらに強固な防災体制の確立に向け、今後どのような取り組みを行われる予定ですか。

間嶋さん :

各機関と連携協定を締結したことで、NICTが提供する※災害状況要約システム「D-SUMM」や、※災害SNS情報分析システム「DISAANA」をさらに有効活用できるようになりました。今後はこれらのシステムを通じて全体的な被災状況を把握しつつ、キーパーソン同士がLINE WORKSで緻密な連携を図ることになります。一方、市民の皆様に対してはLINE@でさまざまな情報を発信していく予定です。今後、防災訓練などにおいてこれらの情報ツールを活用・検証し、災害時における重要かつ有効な情報の共有・発信・収集をしてまいりたいと考えております。

 

中道さん :

今後は、自主防災組織と行政がLINE@で情報共有できる体制構築も検討したいと思います。

LINE WORKSを活用した防災対策は、大阪市以外の自治体にとっても有効だと思われますか。

中道さん :

もちろん有効だと思います。大阪市ではLINE WORKSを局長や区長など災害対策のキーパーソン同士の連絡手段として導入しましたが、規模の小さい自治体であれば、関係するすべての担当者に市長からの指示を直接伝える手段として活用することもできるはずです

 

間嶋さん :

大阪市には職員同士の既存のコミュニケーションツールがあることから、LINE WORKSの活用を危機管理に絞りました。しかし自治体によっては災害対策に限らず、さまざまな通常業務での連絡に使うことも可能だと思います。

 

※災害状況要約システム「D-SUMM」(Disaster-information SUMMarizer)
Twitter上の災害関連情報を人工知能でリアルタイムに分析し、指定エリア内の被災報告状況の概要が一目でわかるようにするシステム

 

※災害SNS情報分析システム「DISAANA」(DISAster-information ANAlyzer)
Twitter上の災害関連情報をリアルタイムに分析し、指定エリアで発生している災害に関する問題・トラブルを自動的に抽出。「大雨が降っているのはどこ」といった質問の回答候補をTwitterの投稿から抽出し、リスト形式や地図形式で表示できるようにするシステム

 

 

※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2019年2月のものです。