北見赤十字病院
2023-01-23
業種
医療・福祉・介護
目的・効果
従業員間の連絡 支店・店舗との連絡 取引先との連絡 コンプライアンス・セキュリティ スマートフォン活用 業務自動化・Bot ノウハウ共有 LINEとの連絡 連携ツール 会議・朝礼 予定の見える化 業務の見える化 導入のしやすさ 電話・メールの削減
主な活用機能
トーク
掲示板
カレンダー
アンケート
お話を伺った方
副院長 患者支援センター長 消化器内科・腫瘍内科部長 上林 実さん(右)  
患者支援センター 地域連携課 課長 西岡 かざみさん(左中)  
医療技術部 診療放射線科 放射線技術課長 兼 情報システム管理室長補佐 中島 勲さん(右中)  
消化器内科 副部長 松田 可奈さん(中)  
腫瘍内科 副部長 八木澤 允貴さん(左)
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医師の働き方改革、タスクシェアをLINE WORKSで実現。 電話による連絡業務が削減され、スピーディな患者の受け入れにもつながっています。

北海道東部・北見市にある北見赤十字病院は、少子高齢化や医師不足を背景に、今後ますます求められる医師の働き方改革や地域医療・介護・福祉との連携強化を図るツールとしてLINE WORKSを導入。電話連絡をトークに置き替え、現場のコミュニケーションが効率化されました。さらにカレンダーの活用により医師の予定が見える化されたことで、業務時間の短縮にもつながり、業務負荷の低減のみならず、迅速な医療提供体制の構築を実現しています。

 

本事例のポイント

-カレンダーで予定を管理し、手の空いている医師へピンポイントでヘルプ要請が可能に

-医師と連携室の連携が強化され、患者のスピーディな受け入れ体制を構築

-医師どうしや診療科を超えた情報共有にテンプレートを活用し、相談業務を効率化

-緊急性の高いレポートを担当医師が即時確認できる仕組みを整備

北見赤十字病院の概要をご紹介ください。

上林さん:

1935年に開設された当院は、北海道指定の地方センター病院、地域医療支援病院として3次救命救急センターを有し、網走市や紋別市などを含むオホーツク3次医療圏で中核的な役割を担っています。総職員数は北見市の人口の約1%にあたる1,192名、そのうち医師数は126名です。また近年の沿革としては、2005年1月に地域がん診療連携拠点病院指定を受け、2014年12月には新病院をオープンし、2018年4月、北海道の委託を受けて道立北見病院を指定管理し、二病院一体運営を開始しています。

 

2022年10月には院内体制を変更して新たに「患者支援センター」を開設するなど、地域に根ざして歩みを進めてきました。職員一同が、オホーツク医療圏の最後の砦として、地域医療・介護・福祉と連携しながら、医療を提供しています。

 

LINE WORKSを導入された経緯を教えてください。

上林さん:

当院のある北見市を含むオホーツク医療圏は超高齢社会が進んでいます。例えば、高齢化が最も進んでいる留辺蘂(るべしべ)自治区では、約2.2人に1人が高齢者です。現在進行形で医療・介護度の高い患者さんが増えている状況です。

 

 

もともと医師数は全国や北海道平均に比べて少ない地域でしたが、医師以外の職種も働き手が少なくなっていきます。こうした現状に対応するためには、「医師や他職種、地域医療・介護・福祉との連携強化と、医師のタスクシェア・タスクシフトをすすめ、効率的で適切な医療を提供できる体制を整えること」がポイントで、そういった体制の実現のために重要なのが「情報共有」になります

 

当院は、北海道大学大学院医学研究院消化器内科学教室の関連病院です。大学院で「肝臓」、「内視鏡」、「化学療法」、「胆膵」、「炎症性腸疾患」の専門分野を修めた医師が分野別に指導医師として派遣され、若手医師とともに現在は計10名で診療に携わっています。

 

当科の役割を24時間365日、絶え間なく果たすためには、指導医師と若手医師の協働は当然として、指導医師間でも各々の専門分野を互いに指導しあって、全員が「総合消化器内科」医師としてタスクシェアする必要があります。そのためには「情報共有」が何より大切です。

 

例えば緊急時にどこで誰が困っているのか、誰の助けが必要なのか、誰が手助けできるのか、最も皆で助け合わなければならない時に、そもそも緊急事態になっていること自体の「情報共有」が難しい、という課題がありました。また、各指導医師との相談業務が時間外となりがちなことも課題でした。

 

現場の情報共有の促進と、医師のスケジュール管理の徹底と業務環境の改善を図るため、LINE WORKSの導入を進めたのです。

院内でのLINE WORKS展開までの流れを教えてください。

上林さん:

幹部クラスのスタッフにスマホが支給されたタイミングでLINE WORKSを試験的に使い始めました。主に新型コロナ感染症関連の業務連絡で使用してみたところ、徐々に私を含め多くのスタッフがその使いやすさと活用の幅に魅力を感じ、私が所属する消化器内科・腫瘍内科の医師10名でも運用を開始しました。

 

その後、当科で一定の効果が出たこともあり、外科や麻酔科などほかの診療科にも運用範囲が広がっていきました。

LINE WORKSは医師の働き方改革にどう活用されていますか?

【カレンダー】医師の予定が見える化され、効率的なヘルプ要請を実現
【グループ】電話からグループに置きかえ、患者受け入れ連絡をスムーズに
【テンプレート】事前に共有事項が整理され、効率的な「報・連・相」を実現

 

上林さん:

消化器内科・腫瘍内科の医師はLINE WORKSのカレンダーに予定を登録して、「予定の見える化」を進めています。この予定の見える化により、電話効率の向上ひいては業務時間の短縮に寄与しました。

 

若手医師が指導医師にヘルプを呼ぶ場合、以前は誰の手が空いているか分からず、何となく手が空いていそうな先生に電話をかけていました。ただそれでは、何人にも電話をかけなければならず、無駄な業務が発生していました。

 

現在は、若手医師が指導医師の予定をカレンダーで確認してから、ピンポイントでヘルプの電話をかけられます。多忙な指導医師へ架電をするという「電話のかけづらさ」もなくなり、心理的なストレスも減ったように思います。

 

また、電話を受ける側の指導医師にとっても、医療行為中やインフォームドコンセント(IC)の時など、緊急の呼び出し以外の電話が受けにくい状況下での着信の数が軽減しました。

 

カレンダーで医師の予定が見える化され、予定確認や依頼がスムーズに

 

情報の共有スピード向上という観点では、一斉送信ができるグループトークも役に立っています。例えば、緊急で患者さんを受け入れる場合、以前は救急担当医師が関係者一人ひとりに電話をかけて、受け入れ患者さんの詳細を伝えていました。現在は、医師を含め関係者が所属するグループに患者さんのIDと受け入れ病棟の情報を一斉送信すれば、即座に情報共有が完了します。複数の関係者に情報が伝達されるので、「いま手伝えるよ」「すみません、その時間は対応できません」といったやり取りも生まれ、タスクシェアも進みました

 

さらに、以前は困難だった診療科をまたいだカンファレンスの開始時間の調整もスムーズに行うことができています。

グループトークを用いてスピーディな情報共有とタスクシェアを実現。診療科をまたいだ調整業務もスムーズに

 

 

松田さん:

テンプレートを活用することにより、医師どうしの相談に係る業務も改善されました。若手医師が専門分野の指導医師に相談したい際に、指導医師に事前に共有するべき項目をまとめたテンプレートもつくりました。

 

相談を受ける指導医師は、テンプレートで事前に把握した相談内容をもとに対応できるので、相談も短時間で済むようになりました。「いまちょっと良いですか?」とその場で情報を拾い合いながら対応するのとでは、相談を受ける側の負担がまったく異なります。さらに、テンプレートには回答期限も記載するようにしているので、急がずカルテ記載で回答できる場合、相談を受ける医師は自分の都合の良い時間で対応が可能となっています。

 

内視鏡分野の指導医師へ、「早期がんを疑う病変に対して、追加検査の必要性の判断や、専門的検査のスケジュール調整」などの相談について、指導医師が事前に欲しい情報をテンプレートにしています。

 

このように相談相手から事前に欲しい情報をまとめたテンプレートを活用することで、相談に係る業務時間の短縮と負担軽減になり、またタスクシェアや医師としてのナレッジ共有の効率化なども実現しています。

テンプレートを活用し、医師どうしのコミュニケーションが効率化

(左図)若手医師から内視鏡分野の指導医師への相談(右図)外科医師からの腫瘍内科医師への症例相談

 

 

そのほか、カンファレンス資料や着任時のマニュアルなど各種資料をフォルダに格納して、情報の集約およびペーパレス化をすすめています。さらに、会議日程や若手医師の曜日担当の変更などに関する調整や医師の意見収集にアンケート機能を活用しています。

 

さまざまな資料をフォルダで共有し、手元でいつでも確認できる

医師への業務改善に関する調査をアンケートで実施

地域連携課と医師とのコミュニケーションはどのように変化しましたか?

西岡さん:

地域連携課では、1日に60件程度、外部医療機関からの紹介受診を対応しております。以前は紹介があった際、対応を急ぐか判断に迷う場合は、外来病棟で忙しく働く看護師に電話をして、さらにその看護師が医師と相談した上で、受診日や入院日の対応を決めていました。そのため、すぐ近くのクリニックで待っている患者さんに、一度帰宅していただくこともあるなど、受け入れ判断までに時間を要していました。

 

 

現在は、消化器内科・腫瘍内科医師の指導医師6名と地域連携課のグループで共有して、対応の指示を仰いでいます。スピーディに医師からの指示を受けられるため、紹介先の医療機関や患者さんへの迅速なレスポンスを実現できるようになりました。また緊急性に応じて「緊急」「準緊急」などの文言をトークの頭に付け、医師に優先度を共有し、適切なタイミングでの対応ができるように工夫もしています。

 

地域連携課と医師との連携が強化され、紹介患者の受け入れスピードが大幅にアップ

医療用画像管理システムとの連携についてお聞かせください。

中島さん:

医療用画像管理システム「PACS」とツール連携を行い、「至急・注意レポート通知機能」も実装しています。この機能は、CTやMRI検査時に作成したレポートの中でも、とくに至急または注意して確認して欲しいレポートがある場合に、担当医のLINE WORKS上に「レポートの確認をお願いします」という通知が送信されます。

 

これまでは医師が電子カルテを開くまで、レポートがきているか把握できなかったため、緊急性の高い至急・注意レポートの確認までにタイムラグが発生していましたが、至急・注意レポート通知機能の実装により、担当医はより早く至急・注意レポートの存在に気づけるようになり、対処を早められています

LINE WORKSを今後どのように活用していきたいですか?

上林さん:

地域医療・介護事業者とのコミュニケーションにも活用していきたいです。手軽に連絡ができ、かつ自身のタイミングで閲覧できるLINE WORKSは非常に相性が良いと感じています。

患者さんの個人情報には触れないよう十分配慮した上で、「この前の患者さんは大丈夫でしたか?」など、電話や書類ではやり取りしづらい情報をLINE WORKSで実現し、地域医療・介護との連携をより深めていきたいと考えます。

また、PACSレポートの緊急通知については、担当医だけでなく診療科のグループにも通知させ、緊急性の高いレポートおよび患者さんへの、診療科全体の意識も高めたいと考えています。

 

【お話を伺った方】

副院長 患者支援センター長 消化器内科・腫瘍内科部長

上林 実さん

 

患者支援センター 地域連携課 課長

西岡 かざみさん

 

医療技術部 診療放射線科 放射線技術課長 兼 情報システム管理室長補佐

中島 勲さん

 

消化器内科 副部長

松田 可奈さん

 

※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2022年10月当時のものです。