導入事例 神奈川県 くらし安全防災局 防災部 消防課

業種 行政

使い方 BCP対策   その他

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消防広域応援体制の情報インフラとしてLINE WORKSを活用し、大規模災害発生時の消防の初動対応が飛躍的にスピードアップ。県と各市町の消防本部が瞬時に連絡を取り合えるようになりました。

  • 推進グループ 主査 村山 祐史さん(右)
  • 推進グループ 主査 髙澤 浩二さん(左)

県内24の消防本部により消防広域応援体制を整える、神奈川県 くらし安全防災局 防災部 消防課は、大規模災害対応時の情報共有基盤としてLINE WORKSを採用。被災地の消防本部による災害発生の第一報や、刻々と変化する災害現場の状況を、グループトークによって県と全消防本部が瞬時に共有できる体制を整えました。県が各消防本部に応援部隊を要請する際の調整・依頼業務もそれまでのFAXと電話から、LINE WORKSのトークやアンケート機能に置き換えられ、迅速な連絡が可能に。大規模災害発生時に求められる初動対応を大幅にスピードアップすることに成功しています。

本事例のポイント

  • 神奈川県の消防広域応援体制の情報共有基盤にLINE WORKSを導入
  • 災害発生時、被災地に出動可能な部隊への応援要請が飛躍的にスピードアップ
  • 県全体で災害の情報を共有できているという安心感が生まれた

神奈川県 くらし安全防災局 防災部 消防課の任務と、皆さんの主な業務内容をご紹介ください。

– 村山さん :
大火や土砂崩れ、河川氾濫のような大規模災害が発生すると、管轄の消防本部の消防力だけでは対応が困難な場合があります。そのため神奈川県では全国初の取り組みとして、2016年4月に「かながわ消防」という消防広域応援体制を整備しました。当課は県内24の消防本部が連携して活動する際の支援・調整を行っており、私はその効率化を図るため、新たな仕組みの構築やその運用などを主な業務としています。

– 髙澤さん :
私は厚木市消防本部の職員ですが、県に出向して「かながわ消防」の連絡調整を行っています。LINE WORKS導入に際しては消防現場における具体的な用途を村山主査に伝え、現在試行運用を行いながらよりよい運用法を検討しているところです。

「かながわ消防」を運営するうえで、これまでどのような課題に直面していましたか。

– 村山さん :
大規模災害での初動対応に重要なのは、県内の全消防本部が災害発生の情報をいち早く共有することです。しかし、対応にあたる消防本部にとって救助活動は最優先のため、県への報告が遅くなりがちで、他の消防本部でも報道によって災害の発生を覚知するというケースも少なくありませんでした。

– 髙澤さん :
県は、被災地の消防本部から応援を求められた場合、各消防本部に消火部隊や救助部隊などを何隊投入できるかを確認しますが、その連絡はFAXで行われていました。FAXはいつ読まれるか分からないので、全消防本部にわざわざ電話をかけてFAXを送信したことを伝えなければならず、その作業に多くの人員が割かれてしまいます。消防本部から県への回答もFAXで行われるので、1分1秒を争う中、現場の出動要請に至るまでに多くの時間を費やすことが課題となっていました。

– 村山さん :
迅速に応援部隊を現地に派遣するには、全消防本部が常時、被害状況などを共有し、県による調整時間も短縮しなければなりません。そのためには、電話やFAXに頼った既存の連絡体制を根本的に見直す必要がありました。

課題解決の手段として、なぜLINE WORKSに着目されたのですか。

– 村山さん :
「かながわ消防」が発足した2016年度末から、各消防本部と県の情報システムを繋ぎ、大規模災害発生の情報を自動的に共有する仕組みを計画しましたが、開発費も運用コストも莫大なものとなることから、再検討することになりました。そこで注目したのが、LINE WORKSです。以前の計画と比べて導入・運用コストが低いだけではなく、多くの方がプライベートで利用しているLINEと使い勝手が似ているLINE WORKSなら、特別な導入教育を施すことなく災害発生時にスムーズに使えることが期待されたことから、2019年度に導入が決定しました。「かながわ消防の初動対応力の強化に関する協定」を締結※し、各消防本部の協力も得ながら効果的な運用方法を検討してきました。

運用体系や利用時のルールについてご説明ください。

– 村山さん :
LINE WORKSアプリをインストールしたタブレット端末を各消防本部の指令室等に1台ずつ配置し、メッセージがあると光とアラームを発する機器を接続して着信に確実に気づけるようにしました。大規模災害時にいち早く被災地を支援する政令市の消防局には部隊が携行するための端末も配布し、災害現場の動画や画像を撮影して発信できるようにしています。

トークには、県と全消防本部が所属する「緊急事態・応援要請」「情報提供」「調整・依頼」の3グループを作成しました。大規模災害時に、被災地の消防力では、対応できないおそれが生じた場合は、当該消防本部が「緊急事態・応援要請」に第一報を発信。「情報提供」には、県等が被災地の消防本部から電話で聞き取った情報をアップするほか、当該消防本部に入力する余裕がある場合、刻々と変化する現場の状況を発信してもらいます。「調整・依頼」は、県が各消防本部に応援出動に応じられる部隊を問い合わせ、出動要請を行うためのものです。

県と各消防本部間の伝達事項を3つのトークグループに整理して共有

– 髙澤さん :
災害現場のリアルな様子を共有するために画像を投稿するときは、例えば救助される方の顏が写らないようにするなど、個人情報の保護にも細心の配慮をするよう伝えています。

– 村山さん :
救助活動が完了したら、被災地の消防本部がその旨を発信します。その時点で事案終了とし、投稿された内容は情報セキュリティの観点から一定期間を経て管理者が削除。各トークグループは過去のチャットが何も入っていない状態に戻され、次の大規模災害発生に備える体制を整えました。

これまでの活用事例と導入効果についてお聞かせください。

– 村山さん :
2020年度以降の正式運用に先立ち、まずは消防訓練などで試用する計画でしたが、2019年10月に発生した台風19号が県内に大きな被害をもたらすと予測されたことから、県と各消防本部間の連絡ツールとして予定を前倒しして活用することになりました。その後も2020年2月に逗子市で発生した土砂崩れなど、数件の事案に際して活用しています。消防広域応援体制における情報共有が、LINE WORKSによっていかにスムーズになるかを検証する機会となっています。

– 髙澤さん :
各消防本部からの大規模災害発生の第一報、県から各消防本部への出動可能な部隊の確認、救助活動現場からの状況報告など、あらゆる場面での連絡が導入前とは比較にならないほど初動対応がスピードアップしたことを実感しています。まだ応援出動が要請されるかどうかわからない段階からグループトークによって情報を共有できるので、各消防本部がいち早く準備をできるようになりました。被災地周辺の消防本部は応援準備が整ったことを自発的に報告し、逆に被災地の消防本部が応援の必要なしと判断した場合はそのアナウンスがなされるので、全体的にむだな動きがなくなりました。

災害現場においては被害軽減のためにも、隊員が自身の身を守るためにも情報収集が重要ですが、大きな災害になるほど出動する部隊や隊員の数が増え、個々の隊員に情報が伝わりにくくなります。しかしLINE WORKSを活用すれば、災害規模の大小に関わらず消防本部が得た情報が速やかに各部隊に伝達されることも明らかになりました。

台風19号への対応時のグループトークの例

– 村山さん :
以前は県の複数の職員がFAXと電話を使って応援出動部隊の調整を担っていましたが、導入後はその手段をグループトークやアンケートに置き換えています。その結果、少数の職員で速やかに調整業務をすることが可能になり、出動可能部隊の調査をLINE WORKSで行うようになってからは、8割の消防本部から60分以内に回答をもらえるようになっています。

出動可能隊数をアンケートで素早く確認

初の試行となった台風19号への対応時は、県がメッセージを発信するたびに24の消防本部から一斉に「了解」のレスがあり、重要な情報が埋もれる恐れがあると感じました。そこで、タイトルに「要返信」とない場合は「了解」のレスをしない取り決めをしました。これは、実際に運用してみたからこそ改善できた点です。

LINE WORKSを活用した各地域の消防本部からは、どのような声が上げられていますか。

– 村山さん :
ある災害では、隣接する消防力の大きい横浜市消防局などが、LINE WORKSを通じて自市の状況を注視してくれていることを心強く感じたという声も届いています。規模が小さい消防本部が、県全体で災害の情報を共有できているという安心感を持てるようになったことも、LINE WORKSを導入しての大きな効果の1つだと思います。

管理者は監査機能でグループトークのログを時系列で整理できるので、各事案への対応を仔細に検証することが可能になりました。いくつかの消防本部から、部隊の行動を事後分析したり、事案終了後の報告書をまとめたりするのにグループトークのログ履歴を活用したいとの要望があったことを受け、現在は管理者権限の一部を委譲して各消防本部の責任者が監査機能を使えるようにしています。

2月に厚木市内にある神奈川県消防学校で行われた、県内の全消防本部が集まっての「かながわ消防訓練」では、救助や搬送などの実動訓練とともに、大画面モニターにトーク画面を写しながら、LINE WORKSで県と消防本部が連絡を取り合う情報受伝達訓練も実施しました。迅速に情報共有がなされる様子に対して、来賓者の方々から高い評価をいただきました。

防災訓練当時の様子をブログで紹介しています

訓練終了後には、黒岩県知事が「LINE WORKSを使うことで、災害対策本部や、各消防本部とのやりとりがしやすくなり、既読がわかり、誰が見たのかということもわかる。電話やFAXの時代には、全員に一度に情報を伝えることが難しかったが、LINE WORKSのようなサービスはとても画期的だと思っている」と発言されています。

LINE WORKSの活用を、今後どのように発展させたいとお考えですか。

– 髙澤さん :
現在はトークとアンケートのみの活用ですが、「かながわ消防」をよりよく機能させるため、必要に応じてLINE WORKSが備えるほかの機能を活用することも検討したいと考えています。

– 村山さん :
国には、被災地の消防力のみでは対応困難な災害の発生に際して、都道府県単位で編成された部隊が応援する緊急消防援助隊という制度があります。その要請があった場合、県は県内の各消防本部に部隊を出せるかどうかを問い合わせるのですが、将来的にはそうした調整においてもLINE WORKSを利用し、より迅速に対応できる体制を構築できるよう、消防本部と一緒に検討していきたいと思っています。

※2019年8月28日 ワークスモバイルジャパン、神奈川県、トランスコスモス 「かながわ消防の初動対応力の強化に関する協定」を締結
https://line.worksmobile.com/jp/pr/20190828/?pnum=2

※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2020年2月当時のものです。