導入事例浜松市

業種 行政

使い方 BCP対策

市と地域医療機関のタイムリーな連携が実現!広域停電発生時には医療機関の早期復旧が実現しました。

  • 浜松市
  • 健康福祉部 健康医療課 専門監 課長補佐 西崎公康さん

南海トラフ地震による津波の到来を想定し、積極的に医療救護体制の見直しを行っている浜松市。電話や無線等の通信手段では、災害時に十分な情報連携ができないという課題を払拭すべくLINE WORKSを導入。結果、西日本豪雨や大規模停電発生時に大きな変化を実感できたといいます。今回は浜松市健康福祉部健康医療課・西崎さんと救急災害医学講座教授・吉野さんに、LINE WORKSの導入経緯や導入後の具体的な変化などをお聞きしました。

▼「テクノロジー特別号」に掲載されました▼

事業内容と皆さんの役割を教えてください。

– 西崎さん:
私は災害医療・医療政策を担当しており、具体的にはがん対策・自殺対策・救急医療体制の構築などを行っております。また医師会・歯科医師会・薬剤師会等の医療関係団体との連絡窓口も務めています。
現在は医療救護担当者として、総合防災訓練・医療救護訓練を重ねて情報伝達体制・情報連携体制の整備や、医療機関・医療関係団体との連携強化にも取り組んでいます。本市は沿岸部や中山間地域を含めた広大な面積を有しており、南海トラフ地震では津波の到来も想定されます。そういった地域特性を踏まえ、医療救護体制の見直しを行っているところです。

– 吉野さん:
浜松医科大学にて救急災害医学講座を開講するかたわら、救急部長として浜松医科大学医学部付属病院で診察も担当しています。災害時には静岡県のDMAT(Disaster Medical Assistance Team=災害派遣医療チーム)の統括および静岡県の災害医療コーディネーターとして、さまざまな調整活動も行います。

災害時の情報連携について教えてください。

– 西崎さん:
本市では災害時に医療機関や応急救護所に情報を伝達する手段として、ファックス・防災無線・衛星携帯電話などを整備しています。しかし東日本大震災や熊本地震の際に、それらの通信手段では思うような連携がとれないという課題が浮上したのです。
東日本大震災発生時には本市からも被災地へ支援に向かったのですが、度重なる余震等で通信が不安定になり、支援に向かった現場スタッフと密に連絡をとることができませんでした。また、熊本地震の支援の際には、モバイルPCによるメールやボイスパケットで連絡をとることも試みたのですが、それだけでは十分な連携が実現しなかったのです。

– 吉野さん:
市が把握している医療機関の電話番号はすべて固定電話ですから、2018年9月の台風で回線が切れた際には電話がつながらず、災害時の情報収集に支障をきたしました。固定電話が不通になった場合は衛星携帯電話を使うという手段もありますが、衛星携帯電話はかけるのにテクニックを要するのです。通話後に伝え漏れがあったことに気付いても再度かけるのが非常に大変ですし、1回線しかないというデメリットもあります。そもそも音声による伝達は情報が間違って伝わるリスクもありますし、会話した相手にしか情報を伝達できませんから、時間を要するという課題も抱えています。

医療機関も含めたネットワーク構築を検討したのはどうしてですか。

– 西崎さん:
阪神淡路大震災では、ある医療機関には被災した市民が押し寄せて受け入れの余裕がなくなる一方で、近隣の医療機関には受け入れる余裕があったということもありました。また、熊本地震発生時は病院側も被災し、入院している患者を転院させる必要もありましたが、どの病院に転院させればよいかなど、現場は混乱していました。また、そのような経験を通じて、医療機関同士が連携する必要性を強く感じました。
大規模災害が起きた際は、一人でも多くの市民を救う必要があるので、ネットワークを確立し、強化することを検討しました。今回の災害医療情報ネットワークは、まずは、電力の供給が停止すると入院患者のいのちに大きく影響する病院、透析、周産期などの医療機関を対象に構築することにしました。

浜松市災害医療ネットワークにおいけるLINE WORKS利用イメージ

LINE WORKSを導入した経緯や決め手を教えてください。

– 西崎さん:
熊本地震では、LINEが情報伝達に非常に役立ったという報告がされています。そこで2017年10月末の医療救護訓練にてLINE WORKSをトライアルで使用してみたところ、非常に良い結果が出ました。衛星携帯電話や防災無線はすべて口頭で伝えますが、LINE WORKSならテキストでやりとりを残すことができます。相手と即時にコンタクトがとれなくても、メッセージを送っておけば後で見てもらえるという点も災害時には非常に役立つのではないかと考えました。また、今回は多くの医療機関・関係者という市以外の方を巻き込んでのネットワークになりますから、伝達事項に対してどの機関が既読したか確認できるということも魅力的でした。
画像が簡単に送信できることも、LINE WORKSを選んだ決め手になりました。大規模地震が起きた場合は応急救護所を市内各所に設置するのですが、そこで医療資機材が足りなくなった際に、医薬品の箱を撮影して送信すれば不足品を正確かつ速やかに伝達することができます。

LINE WORKSは管理者がシステム構築できます。最適なメンバーでのグループ生成ができ、グループ名もアイコンも一定のルールに基づき、管理しやすいよう管理側である市の職員が考えて作り込むことができました。医療機関へのアカウントとパスワードの交付や管理も市で統制でき、ネットワーク構築においてとても役に立ちました。こういった管理はLINEではできない仕組みだと思います。

LINE WORKSの具体的な利用シーンを教えてください。

– 西崎さん:
2018年6月のネットワーク会議で正式に提案し、同年7月から本格導入となりました。現在は機関ごとにIDを発行し、約180のIDを使用しております。

これまでにLINE WORKSを活用するシーンが2回ありました。
1回目は2018年7月の西日本豪雨のときです。本市から広島県に支援チームを派遣し、LINE WORKSで30名ほどの関係者グループを結成しました。本市から報道情報を送ったり、支援チームから本市に現場状況を送るなどして、非常に密な情報連携が実現しました。

2回目は台風24号の影響で2018年9月30日に大規模停電が発生したときです。10月1日早朝に静岡県災害医療コーディネーターを務める吉野教授から、「災害対応が必要ではないか」という一報が入りました。そこから、吉野教授の指示のもと、市から各医療機関に、LINE WORKSを通じてEMIS(厚生労働省が作成した広域災害救急医療情報システム)に被害情報の入力を促しました。入力が難しい場合は、被害状況を各医療機関よりLINE WORKSに投稿してもらい、市でEMISに代理入力するという連携も実現しました。おかげで10月1日の午前中には、市内医療機関の停電状況をほぼすべて把握することができました。

大規模停電発生後の
医療機関からの状況報告
市から各医療機関への周知

– 吉野さん:
災害時は被害情報を我々が把握できないことが最も危険ですから、LINE WORKSで迅速なコミュニケーションがとれたことは非常に良かったです。特に停電による患者への影響が大きい産科・透析・精神科などの被害状況をスムーズに収集できたので大変助かりました。停電状況や復旧施設の優先順位計画について県庁が情報収集したものを、各医療機関に対してLINE WORKSで周知することもできました。また、医療機関同士が状況を報告しあい、どの病院なら搬送できるかという情報も共有しました。LINE WORKSによる速やかな情報収集のおかげで、停電した医療機関の一覧表を作成し、危機管理課を通じて電力会社に早期復旧を要請することができました。電力会社からは、その一覧リストによって早期復旧対応が実現したと聞いております。

LINE WORKS導入後、どのような変化がありましたか?

– 西崎さん:
市がいち早く災害対応の意識に切り替えることができました。災害発生時は、市の職員や医療関係者がスイッチを入れて頭を切り替える必要があります。今回は吉野教授から、「災害対応が必要だ」という声が上がり、スイッチをいち早く入れてもらったおかげで、早朝から医療機関に投げかけをしたり、停電状況を把握したりするなどの早期の対応ができたのだと思います。

統制されたトークグループ
大停電発覚当初の初動対応
電力復旧が必要な
医療機関の情報収集

– 吉野さん:
電話が通じない医療機関と、LINE WORKSで連絡がとれたのは良かったです。またグループトーク機能によって、産科・透析・精神科それぞれのグループで情報共有ができるようになったことも良い変化だと思います。グルーピングができていなければ、無関係な医療機関の情報が交錯して混乱が生じていた可能性があります。

今後、LINE WORKSを活用して取り組みたいことはありますか。

– 西崎さん:
災害発生時の感染症の蔓延を防ぐことも市としての使命ですので、感染症対策について、市と医療機関の連携を密にしたいと考えています。
また、保健環境研究所は市内の感染症流行調査を行い、ホームページなどで公開しています。例えばLINE WORKSを通じて保健環境研究所から最新の感染症流行情報の発信や、保健所から感染症対策の訓練実施を呼びかけるなどが可能かと思います。今後はもっとネットワークを活性化させていきたいですね。

※掲載している内容、所属やお役職は取材を実施した2018年12月当時のものです。

浜松市の事例は自治体通信「テクノロジー特別号」にも掲載されています。